高品質な人工ダイヤモンドの販売開始による天然ダイヤモンドの価格への影響は?

宝石の王者として君臨してきたダイヤモンド。その価値が薄れてきていることをご存知ですか?ダイヤモンドはその美しさと希少性から常に安定した価値があります。ダイヤモンドといえば、婚約指輪などが浮かぶ人も多いのではないでしょうか。『天然のダイヤモンドだからこそ価値がある』=婚約指輪として相応しいときっと誰もが思っているでしょう。

また、ダイヤモンドは硬度10で最も硬い鉱物です。ダイヤモンドの原石は地中奥深くにあり、発掘するのに時間と多くの労働者が必要です。掘り起した瞬間からまばゆいばかりの輝きがあるわけではなく、カットをして対象性とプロポーションを整えてようやくキラキラ輝くダイヤモンドになるのです。発掘するのが困難な為に希少性が高まり、製品化するまでの工程でカットや研磨などの加工があるため莫大な費用がかかります。そのような背景があるが故に美しさと希少性が相成って高値で取引がなされてきました。しかし、これらの価値観には企業や業界のマーケティング活動によってイメージが作り出されたのも事実です。

ダイヤモンドの価値が下がるかもしれない理由

これまでダイヤモンドを採掘するために費やしたコストや時間が技術の進歩によって改善されてきました。天然ダイヤモンドは高価な物ですが、その概念が近年変わってきています。その理由は、人工ダイヤモンドを製造する技術の進化です。素人にはまず見分けがつかないほどの技術で作られた人工ダイヤモンドは、物によって天然ダイヤモンドの半値付近で取引きされています。そして新たなマーケティング活動によって違う価値観が作られそうな気配があります。ダイヤモンドの価値が高価でなくなる可能性があるのです。

人工ダイヤモンド製造技術の進歩

天然ダイヤモンドの元素は炭素です。天然ダイヤモンドは数百年の歳月を経て生成されますが、人工ダイヤモンドは天然ダイヤモンドと同じ炭素の元素を組み合わせて数週間で機械によって生成できます。一昔前の人工ダイヤモンドは天然石には有り得ない痕跡が人工石に含まれていた為、それを見つけることで人工ダイヤモンドを見分けることができていました。しかし今では人工ダイヤモンド特有の痕跡を残さない人工ダイヤモンドが製造されるようになり、物理的、光学的、科学的にも天然か人工かの区別がつかないくらいに製造技術が進歩しました。その結果、世界で最もダイヤモンドの取引量が多いベルギーを本部にするダイヤモンド鑑定機関IGI(International Gemological Institute)が品質を認めた同社の人工ダイヤモンドは、同品質の天然ダイヤモンドと比較して30%以上も安価で取引がされるようになりました。鑑定機関が認定した天然石と同等の人工石の出現は、次々と宝石業界に出回るようになり、既に東京都内の百貨店で人工ダイヤモンド専門店が出店するほどにまで市場が成長しています。

類似品の存在

キュービックジルコニアはご存知でしょうか。ダイヤモンドよりも光の分散率が高く、輝き方が違います。豊かな色合いが特徴でダイヤモンドにないギラギラとした輝きです。多くのアクセサリーに用いられており、一見するとダイヤモンドと見分けがつかない場合もあります。しかし物質的に違うものであり、価値としてもダイヤモンドには遠く及ばないものです。

ダイヤモンドは市場で需要と供給のバランスが保たれている

魚類や野菜のような自然の恵みによって生成されている物は、獲れた量によって値段が変動しています。さんまの漁獲量が減り値段が高騰、葉物野菜の不作の年には値段が跳ね上がります。ガソリンも石油の取引価格によって値段が上昇と下降を繰り返しています。一方で同じような自然界で生成された天然ダイヤモンドはどうでしょうか。ダイヤモンドは地中奥深くに埋まっているため、採掘にかかる手間とコストが販売価格に反映されてきました。しかし長年にわたり採掘をしても枯渇したと聞いたことはあるでしょうか。また技術の進歩によって採掘にかかる手間とコストはかからないはずです。ではなぜダイヤモンド市場には急激な価格変動が起こらないのでしょうか。それは南アフリカを本拠とするデビアス社が原石の採掘から流通に至るまでを支配し、需要に対する供給量を上手にコントロールしているからです。その結果、ダイヤモンドは希少価値があって特別なものというイメージのマーケティング戦略が成功していたのです。

デビアスとは何か

ダイヤモンドの価格は需要と供給のバランスで決まります。ですが、そのバランスを保ち価格が下がったり、高騰しないようコントロールをしているのが、採掘から流通を独占しているデビアス社です。デビアス(De Beers)とは南アフリカ共和国に本社があるダイヤモンドの採掘および需要に応じた流通までをコントロールしている卸売会社です。一度は見たことがある「ダイヤモンドは永遠の輝き」というキャッチコピーや多くの人が慣習として覚えている「婚約指輪は給料3カ月分」もデビアス社が発信した広告メッセージでした。いずれもマーケティング戦略の一環で、「採掘から手元に届くまで」をプロデュースしています。つまり、デビアス社は天然ダイヤモンドの価値を一定の基準で保つためのプロデューサーなのです。

デビアス社が人工ダイヤモンドを開発、天然ダイヤモンドへの影響は?

2018年に人工ダイヤモンドを自社ブランド製品として販売を開始するとデビアス社が発表しました。天然ダイヤモンドの中級以下の品質よりも高品質な人工ダイヤモンドの誕生により人工ダイヤモンド市場が賑わう可能性があります。前述のように現代の人工ダイヤモンドは品質が高く肉眼での判別が困難です。デビアス社の人工ダイヤモンドにはブランド名の“LIGHTBOX”の刻印が人工ダイヤモンドのガードルにレーザーで入り、また人工ダイヤモンド特有の蛍光性反応を示すなど、天然ダイヤモンドが下がらないように差別化が計られています。しかしながら、人工ダイヤモンドは天然ダイヤモンドと同レベルの物と比較しても安価です。今まで手に届かなかった1.0ct以上のダイヤモンドを現実的なお値段で購入ができるようになります。消費者にとっては選択肢が増えて今後の需要バランスに影響が出そうです。

これからの天然ダイヤモンドの価値の行方

ダイヤモンド市場をコントロールしていたデビアス社でしたが、近年ではデビアス社以外の企業がロシアやオーストラリアでダイヤモンド原石の採掘が行われています。つまりデビアス社ではコントロールできない天然ダイヤモンドの流通が始まっています。高価なイメージが保てるように需要と供給をコントロールしていましたが、それが崩れる可能性があります。今後は、低価格で購入できる高品質な人工ダイヤモンドの出現で、内包物がある天然ダイヤモンドを選択しない消費者も増えてくるかもしれません。歴史的にみても代替品の出現には既存の商品、サービスの市場が奪われています。例えば1990年代までは各家庭に固定電話があるのが当たり前でした。しかし携帯電話・スマートフォンの普及に伴い家庭での固定電話の役目が終えようとしています。つまり家庭向け固定電話機の販売個数が減ったことにより市場規模が狭くなりました。FAXもメールへと進化し価格が下落する傾向があります。需要が下がると市場規模が狭くなり販売価格が下がる。販売価格が下がると買取り相場も下落する。このメカニズムは、天然ダイヤモンド市場およびダイヤモンド買取り市場にも当てはまるのか長い目で見ていく必要がありそうです。

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